乱歩自身の言葉を紹介すると、この作品は「息休めに属する拙作」ということである。しかし、専業作家になって間もない乱歩のこの作品には、予告状を出して犯罪を行うという巧妙な手段が描かれており、誰が

乱歩作品としてはこれまでの作品とは少し趣が異なり、最初に犯人が示されます。したがって、犯人捜しやトリックの解明はありません。この作品の持ち味は「謎解き」にあります。

ある中年男のノロケともつかない小咄、と言ってしまえばそれだけなのですが、それだけで終わらないのが江戸川乱歩。派手な殺人事件も巧妙なトリックもありませんが、じんわりと「謎解き」をしてい

江戸川乱歩を語るうえで押さえておきたい作品。乱歩が早稲田大学在学中に日記の余白に書き留めておいたものを後に作品化したものとされています。探偵小説の黎明期のこの作品に登場する

乱歩初期４作品のうちで、乱歩自身によると「最も好評であった」作品。偶然を重ねる事によって成立させる犯行手段、「プロバビリティーの犯罪」は海外にも誇り得る画期的なトリックとされている。

「二銭銅貨」と同時期に書かれた江戸川乱歩のデビュー作。一般的には「二銭銅貨」のみが処女作と見なされているが、これは、この作品の出来があまりに素晴らしかったために、外国の推理小説を下敷

「愚作」と乱歩自身が切り捨てたと言われる作品です。確かにトリックそのものは平凡ではありますが、AとBのやりとりだけで物語を構成しているという、乱歩作品には珍しい作品です。

江戸川乱歩、戦後初の作品。谷崎潤一郎「途上」にもある「プロパビリティーの犯罪」で綴られた作品です。

乱歩がSF小説？と思わせるような作品名。しかし聴き始めるとあなたは、幻想的悪夢的に展開していく物語にぐんぐん引き込まれていくでしょう。この作品の執筆当時の江戸川乱歩は体調を崩していて探偵小説

若くして亡くなった弟と雪枝が互いに送りあった「暗号」。その「暗号」ひとつひとつ紐解いていく乱歩の筆には爽快感さえ感じる。そこでこの小説は終わったかと思うと、最後の最後に用意された衝撃

これは・・・、出版やオーディオブック化されていいのだろうか、という内容の作品です。現在の感覚では到底許されない事象や表現がなされています。しかし、この作品が発表された時代、大正から

江戸川乱歩・横溝正史・甲賀三郎・大下宇陀児・夢野久作・森下雨村と書き継がれた合作探偵小説「江川蘭子」。このリレー形式の連作長篇の最初を執筆したのが江戸川乱歩だ。

切なくも哀しい乱歩の小品。淡い気持ちと果たせぬであろうさえない中年男の夢を乗せて、廻る廻る回転木馬。でも、廻っているのは木馬なのだろうか。本当に廻っているのは？と考えさせられ

「Ｄ坂の殺人事件」「心理試験」に続く、明智小五郎シリーズの三作目。暗号を解読して事件を解決していく、という手法を採用したが、乱歩にとってはまだまだ不満の残る作品だったらしい。

乱歩の自作解説によると、｢持ち込みでもなく、他人の世話にもならず、先方からお目がねで原稿の依頼を受けたのは、これ（「夢遊病者の死」）が最初であった｣ということです。

喜劇、です。しかし乱歩ですから「謎解き」もあります。それは算盤（そろばん）。内気な男は愛の告白に算盤をどう使ったのか、そしてその恋の行方は、、、。大正ノスタルジーの香りがプン

明智小五郎シリーズ、前期五作目の四番目にあたります。この作品では明智小五郎は派手な作品で派手な活躍をするわけではありませんが、明智の趣味嗜好が明確になった作品でもあります。

1931年（昭和6年）に発表された短編です。
たびたび題名が「目羅博士」になるなどしましたが、ここでは発表当初の作品名にしました。

江戸川乱歩の作品には「鬼」という言葉が入った作品が六作品ありますが、これはズバリそのもの「鬼」という題名です。

短編ですが、子供向け作品以外では乱歩最後の作品として非常に興味深い作品です。派手なシーンや巧妙なトリックはありませんが、丁寧に書き込まれた小品の最後の五文字を話者がどう読むか、オーディオブッ

日本の推理小説界に燦然と輝く江戸川乱歩のデビュー作。日本最初の本格探偵小説と言われるこの作品を聴かずして推理小説を語る資格はない。「あの泥棒が羨ましい」で始まる一行は松本清張

鏡に映る向こうの自分は虚像。虚像の数は鏡の数が増えると限りなく増えて行く。では、球体の内部が鏡張りだとしたら、そこに移る自分の姿は？誰にも止められない「彼」の暴走は、現代社会の政治の

乱歩デビュー以来、初の「長編」。
これまでは短編中心の作品だったが「湖畔亭事件」で初めて７万字をこえる作品を発表。ここから乱歩の筆が走っていきます。
今となってはトリックなどが古い、という

――ある死…

明智小五郎シリーズの二作目にあたる「心理試験」。作中にもしばしば「Ｄ坂の殺人事件」や「明智小五郎」について触れられている。乱歩は「発表直後から評価が高く、これをきっかけとして