ある中年男のノロケともつかない小咄、と言ってしまえばそれだけなのですが、それだけで終わらないのが江戸川乱歩。派手な殺人事件も巧妙なトリックもありませんが、じんわりと「謎解き」をしてい

乱歩作品としてはこれまでの作品とは少し趣が異なり、最初に犯人が示されます。したがって、犯人捜しやトリックの解明はありません。この作品の持ち味は「謎解き」にあります。

乱歩自身の言葉を紹介すると、この作品は「息休めに属する拙作」ということである。しかし、専業作家になって間もない乱歩のこの作品には、予告状を出して犯罪を行うという巧妙な手段が描かれており、誰が

切なくも哀しい乱歩の小品。淡い気持ちと果たせぬであろうさえない中年男の夢を乗せて、廻る廻る回転木馬。でも、廻っているのは木馬なのだろうか。本当に廻っているのは？と考えさせられ

江戸川乱歩を語るうえで押さえておきたい作品。乱歩が早稲田大学在学中に日記の余白に書き留めておいたものを後に作品化したものとされています。探偵小説の黎明期のこの作品に登場する

タイトルからも想像が付く通り、乱歩得意の「猟奇的」な作品です。猟奇的ではありますが、最後の最後にとんでもない仕掛け（？）が待っています。この作品の「百面相」のアイディアは、の

喜劇、です。しかし乱歩ですから「謎解き」もあります。それは算盤（そろばん）。内気な男は愛の告白に算盤をどう使ったのか、そしてその恋の行方は、、、。大正ノスタルジーの香りがプン

我々には、知らないままで終わらせたほうが幸せなこともある。もしあなたが人生の半ばに達していなければ、この結末は認めたくないに違いない。人生の半ばを過ぎ終点が見えかけている人にとっては、深く感

江戸川乱歩の三作目。1923年（大正14年）に書かれた乱歩作品はこれ一作のみである。前二作が好評だったため、乱歩は相当気負ってこの作品を書き上げたという事だ。

短編ですが、子供向け作品以外では乱歩最後の作品として非常に興味深い作品です。派手なシーンや巧妙なトリックはありませんが、丁寧に書き込まれた小品の最後の五文字を話者がどう読むか、オーディオブッ

乱歩初期４作品のうちで、乱歩自身によると「最も好評であった」作品。偶然を重ねる事によって成立させる犯行手段、「プロバビリティーの犯罪」は海外にも誇り得る画期的なトリックとされている。

明智小五郎シリーズ、前期五作目の四番目にあたります。この作品では明智小五郎は派手な作品で派手な活躍をするわけではありませんが、明智の趣味嗜好が明確になった作品でもあります。

これは・・・、出版やオーディオブック化されていいのだろうか、という内容の作品です。現在の感覚では到底許されない事象や表現がなされています。しかし、この作品が発表された時代、大正から

「二銭銅貨」と同時期に書かれた江戸川乱歩のデビュー作。一般的には「二銭銅貨」のみが処女作と見なされているが、これは、この作品の出来があまりに素晴らしかったために、外国の推理小説を下敷

「愚作」と乱歩自身が切り捨てたと言われる作品です。確かにトリックそのものは平凡ではありますが、AとBのやりとりだけで物語を構成しているという、乱歩作品には珍しい作品です。

乱歩の自作解説によると、｢持ち込みでもなく、他人の世話にもならず、先方からお目がねで原稿の依頼を受けたのは、これ（「夢遊病者の死」）が最初であった｣ということです。

江戸川乱歩の作品には「鬼」という言葉が入った作品が六作品ありますが、これはズバリそのもの「鬼」という題名です。

若くして亡くなった弟と雪枝が互いに送りあった「暗号」。その「暗号」ひとつひとつ紐解いていく乱歩の筆には爽快感さえ感じる。そこでこの小説は終わったかと思うと、最後の最後に用意された衝撃

「自作解説」も同時収録。いかにも乱歩らしい奇怪なおどろおどろしいストーリー展開に最後まで耳を奪われることでしょう。乱歩の作は衝撃的な言葉で終わります。その続きを書くのはあなた

――ある死…

汽車に乗り合わせた老人は押絵を携えていた。その押絵の由来を明かす老人の口から語られた言葉は、夢か現か幻か。自作の評価に厳しい乱歩が珍しく肯定的な言葉を残した幻想的作品。

「妻に失恋した」という男の死体が発見された。
死体があったのは密室状態の自室。状況から「自殺」とされたこの事件を、当時、世田谷警察署の刑事だった「私」が疑問を持つところから物語は始まる

「私」の「語り」によってストーリーが展開していく作品。この作品は「読む」よりも「聴く」ほうが数倍面白い作品の一つです。朗読者の個性によって面白さが変わってくる作品でもあるので

鏡に映る向こうの自分は虚像。虚像の数は鏡の数が増えると限りなく増えて行く。では、球体の内部が鏡張りだとしたら、そこに移る自分の姿は？誰にも止められない「彼」の暴走は、現代社会の政治の

日本の推理小説界に燦然と輝く江戸川乱歩のデビュー作。日本最初の本格探偵小説と言われるこの作品を聴かずして推理小説を語る資格はない。「あの泥棒が羨ましい」で始まる一行は松本清張