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サマリー
あらすじ・解説
「アワノトモキの読書の時間」、ホシノです。今回取り上げたのは、小野寺拓也さん、田野大輔さんの『検証ナチスは『良いことも』したのか』。結論から言うと「ナチスは良いことなんてしていない」。かなりストレートなテーマですが、だからこそ改めて知っておく必要がある内容だと感じました。
110ページほどの軽めなボリュームではあるものの、ナチス研究を専門にする著者たちが、一般向けにわかりやすくエッセンスをまとめてくれている内容。ちなみに、フォルクスワーゲン(Volkswagen)が実はナチス時代に「国民向けの福利厚生」の一環として誕生したという話はそそりましたね。
ヒトラーの宣伝の上手さとか国民からの支持にまつわるイメージは強いものの、実は支持率が過半数を取れず、いろんな政治的妥協の産物としてヒトラーが政権を握るに至った経緯など、知っているようで知らない視点がいろいろある様子。
ナチスが生まれる当時の歴史的文脈や政治状況を考えると、今の日本だって似たようなことが起こり得るかもしれない。だから歴史研究者が果たす「事実を文脈に位置づけて提示する」っていう役割が重要だと、この本でも強調されています。実際、社会への不満や正しさへの反発が強いと、「もしかしたらナチスもいい部分があったんじゃないか」なんて意見が出てきがちですが、「いやいや、いいことなんてしていない」という結論が揺らぎようもないことを教えてくれそうです。