奇妙な遠眼鏡
カートのアイテムが多すぎます
カートに追加できませんでした。
ウィッシュリストに追加できませんでした。
ほしい物リストの削除に失敗しました。
ポッドキャストのフォローに失敗しました
ポッドキャストのフォロー解除に失敗しました
Audible会員プラン 無料体験
-
ナレーター:
-
村上 めぐみ
-
著者:
-
夢野 久作
このコンテンツについて
アアとサアは大変にくやしがって、その晩、兄弟三人が揃ってへやに寝ますと、リイを窓から外へひきずり出して、そのまま窓をしめて寝てしまいました。
リイは涙をポロポロこぼしながらお月様を見ておりますと、不意にうしろの方からシャガレた声で、「リイやリイや」と云う声がしました。ビックリしてふり向きますと、そこには顔色の青い、眼の玉の赤い、白髪のお婆さんが立っておりました。お婆さんはニコニコ笑いながら、外套の下から小さな黒い棒を出してリイに渡しました。そうしてリイの耳にシャガレた低い声でこういいました。
「この眼がね、眼にあてて 息つめて、アムと云え すきなとこ、見られるぞ。 このめがね、眼に当てて すきなとこ、のぞいたら 息つめて、マムと云え どこへでも、ゆかれるぞ」
リイはためしに黒い棒を片っ方の眼に当てて、向うの山の上のお月様をのぞいて、教わった通り、「アム」と云って見ました。リイはあんまり不思議なのに驚いて、棒を取り落そうとした位でした。お月様の世界がリイの眼の前に見えたのです。
夢野久作
日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。1889年(明治22年)1月4日-1936年(昭和11年)3月11日。他の筆名に海若藍平、香倶土三鳥など。現在では、夢久、夢Qなどと呼ばれることもある。福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇色と幻想性の色濃い作風で名高い。またホラー的な作品もある。(c)2017 Pan Rolling
こちらもおすすめ
-
幽霊と推進機
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: テルヤン
- 再生時間: 41 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
明治19年。イギリス人を船長とする貨物船は香港からシンガポールへ向かっていた。航海の途中、主人公はその貨物船に乗り込む。
著者: 夢野 久作
-
斬られたさに
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 斉藤 範子
- 再生時間: 1 時間 23 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
黄色い桐油の旅合羽を着た若侍が一人松の間に平伏している。その前後に二人の髭武者が立ちはだかっていた。どうやら若侍が髭武者達に絡まれているようだ。
著者: 夢野 久作
-
一足お先に
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 2 時間 17 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
の膝小僧が不意にキリキリと痛み出して青年・新東は跳ね起きた。何かしらの鋭い刃物で突き刺されたような痛み。 半分夢心地のまま、その辺りを触ってみると右足が見つからない。そう、新東は肉腫によって右足を切断していた。 切断してから気味の悪い足に関する夢をよく見ていた。
-
-
何度も聞いた
- 投稿者: うっち 日付: 2024/09/25
著者: 夢野 久作
-
難船小僧(S・O・S・BOY)
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 1 時間 17 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
「ギャア――。ウワアッ。助けて助けて……カンニンして下サアイ。僕はこの船を降りますから……どうぞどうぞ……助けてエ助けてエッ……」
「アハハハ。どうもしねえだよ。仕事を手伝いせえすれあ、ええんだ」
「許して……許して下さあい。僕……僕は……お母さんが……姉さんが家(うち)に居るんですから……」
「ウハハハハ……云う事を聴かねえとコレだぞ」
「致します致します。何でも致します。……すぐに……すぐに船から下して下さい。殺さないで下さい」
「知ってやがったか。ワハハハハハハハ」
昭和二年頃の十月の末だったっけ……
足音高くブリッジに登って行った俺は、船長(おやじ)の背後でワザと足音高く立停まった。
「おはよう……」と声をかけたがは見向きもしない。何しろ船長仲間でも指折の変人だからね。何か一心に考えていたらしい。俺は右手に提げた黄色い、四角い紙包を船長の鼻の先にブラ下げてキリキリと回転さした。
「御註文のチベット紅茶です。やッと探し出したんです」
船長(おやじ)はやっとびっくりしたらしく首を縮めた。無言のまま六尺豊かの長身をニューとこっちへ向けて紅茶を受取った。
「ウウ……機関長か……アリガト……」とプッスリ云った。コンナ時にニンガリともしないのがこの船長の特徴な
著者: 夢野 久作
-
近眼芸妓と迷宮事件
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 41 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
元刑事が出会ったひとつの事件。材木屋の主人である金兵衛が殺害されたことで物語がはじまる。
著者: 夢野 久作
-
幽霊と推進機
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: テルヤン
- 再生時間: 41 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
明治19年。イギリス人を船長とする貨物船は香港からシンガポールへ向かっていた。航海の途中、主人公はその貨物船に乗り込む。
著者: 夢野 久作
-
斬られたさに
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 斉藤 範子
- 再生時間: 1 時間 23 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
黄色い桐油の旅合羽を着た若侍が一人松の間に平伏している。その前後に二人の髭武者が立ちはだかっていた。どうやら若侍が髭武者達に絡まれているようだ。
著者: 夢野 久作
-
一足お先に
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 2 時間 17 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
の膝小僧が不意にキリキリと痛み出して青年・新東は跳ね起きた。何かしらの鋭い刃物で突き刺されたような痛み。 半分夢心地のまま、その辺りを触ってみると右足が見つからない。そう、新東は肉腫によって右足を切断していた。 切断してから気味の悪い足に関する夢をよく見ていた。
-
-
何度も聞いた
- 投稿者: うっち 日付: 2024/09/25
著者: 夢野 久作
-
難船小僧(S・O・S・BOY)
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 1 時間 17 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
「ギャア――。ウワアッ。助けて助けて……カンニンして下サアイ。僕はこの船を降りますから……どうぞどうぞ……助けてエ助けてエッ……」
「アハハハ。どうもしねえだよ。仕事を手伝いせえすれあ、ええんだ」
「許して……許して下さあい。僕……僕は……お母さんが……姉さんが家(うち)に居るんですから……」
「ウハハハハ……云う事を聴かねえとコレだぞ」
「致します致します。何でも致します。……すぐに……すぐに船から下して下さい。殺さないで下さい」
「知ってやがったか。ワハハハハハハハ」
昭和二年頃の十月の末だったっけ……
足音高くブリッジに登って行った俺は、船長(おやじ)の背後でワザと足音高く立停まった。
「おはよう……」と声をかけたがは見向きもしない。何しろ船長仲間でも指折の変人だからね。何か一心に考えていたらしい。俺は右手に提げた黄色い、四角い紙包を船長の鼻の先にブラ下げてキリキリと回転さした。
「御註文のチベット紅茶です。やッと探し出したんです」
船長(おやじ)はやっとびっくりしたらしく首を縮めた。無言のまま六尺豊かの長身をニューとこっちへ向けて紅茶を受取った。
「ウウ……機関長か……アリガト……」とプッスリ云った。コンナ時にニンガリともしないのがこの船長の特徴な
著者: 夢野 久作
-
近眼芸妓と迷宮事件
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 41 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
元刑事が出会ったひとつの事件。材木屋の主人である金兵衛が殺害されたことで物語がはじまる。
著者: 夢野 久作
-
山羊髯編輯長
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: テルヤン
- 再生時間: 2 時間 41 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
東京一、日本一の東洋時報社で腕を振るっていた「吾輩」。あまりの腕にの良さに、悪さの限りを尽くしてきた。 その結果、東京中の新聞社からボイコットを食らう。警察や下宿からも相手にされなくなり、東京を出て心機一転博多に向かった。
著者: 夢野 久作
-
霊感!
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 1 時間 20 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
ある青年が急患でやってきた。ドクトル、オルデスネル、パーポンの三人は顔を上げた。
著者: 夢野 久作
-
木魂
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 斉藤 範子
- 再生時間: 1 時間 27 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
「……俺はどうしてコンナ処に立ち佇どまっているのだろう……踏切線路の中央まんなかに突立って、自分の足下をボンヤリ見詰めているのだろう……汽車が来たら轢ひき殺されるかも知れないのに……。」
著者: 夢野 久作
-
骸骨の黒穂
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 斉藤 範子
- 再生時間: 57 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
直方の南の町外れに一軒の居酒屋があった。主人は藤六といい六十絡みの独身者の老人。
著者: 夢野 久作
-
女坑主
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 斉藤 範子
- 再生時間: 46 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
「ホホホ。つまりエチオピアへお出でになりたいからダイナマイトをくれって仰言おっしゃるん ですね。お易やすい御用ですわ。ホホホ」
著者: 夢野 久作
-
けむりを吐かぬ煙突
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 野口 晃
- 再生時間: 59 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
新聞記者の「私」はお屋敷に住むある未亡人に目をつけた。巨万の財産を死蔵し珍書画の収集に没頭していた伯爵。45年前に肺病により死んでしまい夫人は未亡人となる。
-
-
ナレーションが素晴らしい
- 投稿者: うっち 日付: 2024/07/20
著者: 夢野 久作
-
黒白ストーリー
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 野口 晃
- 再生時間: 1 時間 40 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
いなせな仕事着を着た若者・三平。飯田町付近の材木置き場の中の板をあちこちに並べ直していた。しきりに声色を使い、時には変な身振りを混ぜた三平は芝居気違いだ。
著者: 夢野 久作
-
冥土行進曲
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 1 時間 34 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
Q大学の医学部の病室に柔道教師・友石友太郎の異母弟である友次郎が入ってきた。友次郎は、死人のような青い顔をして友太郎の寝台前に立った。
著者: 夢野 久作
-
衝突心理
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 24 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
早朝の三時頃、京浜国道川崎市の東の外れで、トラック同士が衝突した。追突した運転手は蟹口才六。
著者: 夢野 久作
-
あやかしの鼓
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 西村 健志
- 再生時間: 2 時間 31 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
私は嬉しい。「あやかしの鼓」の由来を書いていい時機が来たから……
「あやかし」という名前はこの鼓の胴が世の常の桜やつつじとちがって「綾になった木目を持つ赤がし」で出来ているところからもじったものらしい。同時にこの名称は能楽でいう「妖怪(アヤカシ)」という意味にも通っている。
この鼓はまったく鼓の中の妖怪である。皮も胴もかなり新らしいもののように見えて実は百年ばかり前に出来たものらしいが、これをしかけて打ってみると、ほかの鼓の、あのポンポンという明るい音とはまるで違った、陰気な、余韻の無い……ポ……ポ……ポ……という音を立てる。
この音は今日迄の間に私が知っているだけで六、七人の生命を呪った。しかもその中の四人は大正の時代にいた人間であった。皆この鼓の音を聞いたために死を早めたのである。
これは今の世の中では信ぜられぬことであろう。それ等の呪われた人々の中で、最近に問題になった三人の変死の模様を取り調べた人々が、その犯人を私――音丸久弥と認めたのは無理もないことである。私はその最後の一人として生き残っているのだから……
私はお願いする。私が死んだ後にどなたでもよろしいからこの遺書を世間に発表していただきたい。当世の学問をした人は或は笑われるかも知れぬが、しかし……
楽器というものの音が、どんなに深く人の心を捉える
-
-
実写化するとしたら
- 投稿者: Amazonカスタマー 日付: 2024/08/25
著者: 夢野 久作
-
戦場
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 野口 晃
- 再生時間: 1 時間 58 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
外科病院を開業しているポーランド生まれのドイツ医学博士。1916年の1月の末。医学博士が28歳の時、ベルリンの市役所に傭医院を勤めていた。
著者: 夢野 久作
-
ココナットの実
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: あべわき
- 再生時間: 1 時間 11 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
妾こと美少女エラ子は、神戸海岸通りのレストラン・エイシャの隅っこに腰掛けていた。
著者: 夢野 久作
-
鉄鎚
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 野口 晃
- 再生時間: 1 時間 54 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
――ホントウの悪魔というものはこの世界に居るものか居ないものか――
――居るとすればその悪魔は、どのような姿をしてドンナ処に潜み隠れているものなのか――
――その悪魔はソモソモ如何なる因縁によって胎生しつつ、どのような栄養物を摂(と)って生長して行くものなのか――
――その害悪と冷笑とを逞ましくし行く手段は如何――
かような質問に対して躊躇せずに答え得る人間は、そう余計には居るまいと思う。然るに私はまだヤット二十歳になったばかしの青二才である。だから聖人でも哲学者でもない筈であるが、しかしこの問いに対しては明白に答え得る確信を持っている。
――ホントウの悪魔とは、自分を悪魔と思っていない人間を指して云うのである――自分では夢にも気付かないまんまに、他人の幸福や生命をあらゆる残忍な方法で否定しながら、平気の平左で白昼の大道を濶歩して行くものが、ホントウの悪魔でなければならぬ――
――だから本当の悪魔というものは誰の眼にも止まらないで存在しているのだ――
――そのような悪魔の現実社会に於ける生活とか、仕事とかいうものが如何に戦慄すべきものがあるかという事なぞも、滅多に考えられた事がないのだ――
...
-
-
女性は女性ナレーターでお願いします
- 投稿者: ranpox 日付: 2024/07/15
著者: 夢野 久作
-
縊死体
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: テルヤン
- 再生時間: 6 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
ある公園のベンチ。目の前の噴水の音を聞きながら、「私」は夕刊を広げていた。ある記事を探し、見当たらないことが分かると安堵した。
著者: 夢野 久作
-
継子
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 安田 愛実
- 再生時間: 48 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
ある日の登校中、怖い顔をしたルンペンから手紙を一通受け取った玲子。誰にも分からないようにお前のお母さんに渡せ。うまく渡せさないとお前がお母さんに殺されてしまう。
著者: 夢野 久作
-
空を飛ぶパラソル
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 野口 晃
- 再生時間: 1 時間 21 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
福岡時報の新聞記者である「私」は特ダネを探しに九大工学部へ向かう。工学部の正門前は一面の水田になっていた。
著者: 夢野 久作
-
眼を開く
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: テルヤン
- 再生時間: 38 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
唯物弁証法的な考えを持つ小説家に起こったひとつの出来事。ある若い小説家が創作に専念するためにある山奥にこもる。
-
-
心が動かされました
- 投稿者: amalfi_7 日付: 2024/07/26
著者: 夢野 久作
-
押絵の奇蹟
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 中川 奈美
- 再生時間: 3 時間 50 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
明治13年。井ノ口トシ子は、九州にて美人聡明な母と堅物の漢学者である父の間に生を受ける。手芸の名人であったトシ子の母は博多随一の富豪、柴田忠兵衛にその腕前をかられ、当時の名優、中村半太夫の舞台を元に押絵の制作を依頼される。出来上がった作品、「阿古屋の琴責め」は柴田忠兵衛の屋敷が見物人で溢れるほどの傑作であった。その評判は瞬く間に博多中を駆け回り、母による押絵作りはいつしか井ノ口家の家計を支えるほどになっていく。そして不思議なことに、幾枚も作られていく押絵のモデルは決まっていつも、美貌の娘トシ子の顔であった。時は過ぎ、明治24年。柴田は新たな押絵を依頼する。彼がそのモチーフにと届けた、大量の錦絵に描かれし「里見八犬伝」の一幕にトシ子が見つけたものは、自分と「瓜二つ」の犬塚信乃の姿であった。そうして完成した押絵は柴田により櫛田神社に奉納され、その評判を聞きつけた父親は喜び勇んで神社へと足を運ぶ。しかし、群集でごった返す妻の作った押絵の前で、彼はある噂を耳にしてしまう。美貌の娘トシ子と、押絵に描かれた稀代の名優中村半太夫が瓜二つであり、自身の妻がトシ子を孕んだ時期が、最初に作った「阿古屋の琴責め」のために観劇した舞台の時期と一致していたことを。堅物でお世辞にも色男とは呼べない父親はその足ですぐに帰宅し、妻と中村半太夫の不義密通を疑い問いただす。「どうぞ、お心のままに遊ばしませ。不義を致し
著者: 夢野 久作
-
支那米の袋
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 伊原 農, 斉藤 範子
- 再生時間: 1 時間 38 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
『私はもう近いうちに日本と戦争をして戦死をするのです。ですからもう、貴女以外の女の人と結婚する事は出来ないのです。貴女と一緒に天国に行くよりほかに楽しみは無くなったのです。ですから満足して、私の云う事をきいて頂戴。温柔おとなしく私の云う通りになって死んで頂戴。ね……わかったでしょう。』ウラジオストクの踊り子ワーニャと若きアメリカ人士官ヤングは互いを傷つけあうような夜の営みを持つ関係になっていた二人は、近々出帆のため別れを余儀なくされることになる。別れたくないワーニャにヤングが持ちかけたアイディアは、支那米の袋に入って軍艦に忍び込みアメリカへ亡命するというものだった。お互いを傷つけることで愛を確かめる行為の最終的な形を、ワーニャに教え込んだヤングが出帆の夜に"持ち込んだ"軍艦の底には、似たような米袋が数多く運び込まれているだった。洗脳されたワーニャの行く末は如何に。想いを遂げる方法は一つ。鋭く冷たく光ったナイフによってなされるのか・・・。
著者: 夢野 久作
-
氷の涯
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 斉藤 範子
- 再生時間: 5 時間 15 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
大正9年、日本軍がシベリア出兵中のハルビンで、日本軍司令部から十五万円という高額な公金がなくなる事件が起こった。日本軍の陸軍歩兵一等卒・上村作次郎が、誰かに宛てた手記の形で、自分の身にふりか
-
-
語りで解き明かす
- 投稿者: tkhsh 日付: 2023/06/02
著者: 夢野 久作
-
巡査辞職
- 著者: 夢野 久作
- ナレーター: 野口 晃
- 再生時間: 2 時間 18 分
- 完全版
-
総合評価
-
ナレーション
-
ストーリー
「草川の旦那さん。大変です。起きて下さい。モシモシ。起きて下さい。私は深良一知(ふからいっち)です」
暑い暑い七月の末の或る早朝であった。山奥の谷郷村駐在所の国道に面したホコリだらけの硝子戸をケタタマシク揺ぶりながら、一人の青年が叫んだ。
それは見るからにここいらの貧乏百姓の児と感じの違った、インテリじみた色の白い鼻筋のスッキリとした美しい青年であった。慌てて走って来たものと見えて、手拭浴衣の寝巻に帯も締めない素跣足が、灰色の土埃にまみれている。……と……駐在所の入口になっている硝子戸が内側からガタガタと開いて、色の黒い、人相の悪い顔に、無精鬚をぼうぼうと生した、越中ふんどし一つの逞ましい小男が半身を現わした。
「どうしたんか」
「アッ。草川の旦那さん」
草川巡査はねむそうな眼をコスリコスリ青年の顔を見直した。
「何だ。一知じゃないかお前は……」
「はい。あの……あの……両親が殺されておりますので……」
「何……殺されている? お前の両親が……」
「はい。今朝、眼が醒めましたら、台所の入口と私の枕元に在る奥の間の中仕切が開け放しになっておりましたから、ビックリして奥の間の様子を見に行ってみますと、お父さんと、お母さんが殺されております。蚊帳(かや)が釣ってありますので、よくわかりませんが
著者: 夢野 久作